はじまりは、1種類のパウンドケーキでした。
今では何十種類ものお菓子をつくれる環境へ。
もともとは名島の民家で、家庭用ハンドミキサーを使ってパウンドケーキをつくりはじめたのがきっかけでした。当初は5、6人で1日10本程度つくるのがやっと。自分たちで情報を集めて工夫を重ねながら、お菓子づくりを続けました。つくったお菓子を置いてもらえるお店を探したり、企業に売り込んだりするようになると少しずつ広まっていき、今では多い日で1日300本以上製造できています。エフコープ新宮店などの施設やショップでも取り扱い中。お中元やお歳暮用のお菓子としても人気です。
今日は、ここまでできた。
次はここまでできたらいいね。
小さな積み重ねが、この工房を大きくしました。
ここでは、障がいのあるスタッフができることや生かせることを見極めながら、役割分担をしています。例えば細かいことが気になる人はホコリの混入を防ぐ梱包作業を、文字を書くことが好きな人はスケジュールや納品書などの記載を担当。お菓子づくりではそれぞれの工程を分け、スタッフが作業しながら支援員が随時チェックすることで、工程における抜けの回避や衛生管理、安全性を保っています。
リボンが一人で結べるようになった。
挨拶ができるようになった。
配達先で人と話せるようになった。
かけがえのない職場づくり。
みんなでつくったものが広がっていくほど、障がいのあるスタッフの工賃になります。工賃が増えれば、自分の好きなことを楽しむ時間を持つことができます。スタッフそれぞれが社会参加をしながら、地域で暮らせる環境をつくっていくこと。ここでの就労支援は、かけがえのないものなのです。
モノづくりを通じて、社会とのつながりができ、
働く喜びを感じています。
心の成長にもつながります。
みんながつくったものは、カフェ オリジナルスマイるやワークショップたちばなで販売しています。モノづくりから社会とつながっています。
[共に働く職員の想い] 悩んで迷って成功した時の充実感は
焼きあがったお菓子の美味しさにも似ています。
全ては毎日の積み重ね。
別々の個性が交わって、大きな成長へ繋がります。
一口に障がいのある人たちと言っても、様々な人たちがいます。流れが決まっている工程の中で納得が出来ないことが出てくると気になってしまって流れを止めてしまう人。決められた流れの通りに工程が進まないと怒り始める人。他の人の作業にまで口を出さないと気がすまない人。逆に人から口出しされることを極端に嫌がる人。その人の障がい特性によって様々ですが、ある意味大きな個性とも言えます。パズルのピースのような様々な個性がぶつかりあう中で、お客様に満足して頂ける商品を製造していかなければなりません。口頭で説明する。カードやアプリなど視覚的に伝わりやすいものを活用する。対話を重ねて課題点を見出していく…。様々なトライ&エラーを試していくうちに、ある日ピッタリとパズルのピースが合う時が訪れます。大きな発見もあれば気づかないぐらいの小さな成長もあります。すべては毎日の積み重ねなのだと思います。
一人一人が輝けるフィールドの実現を目指して。
仕事を頑張りたい、という気持ち以外に様々な欲求があるのは誰だって同じ。熱中して取り組めることを見つけたい、お洒落を楽しんでみたい…。ですが、障がいのあるスタッフの中には、どうやって熱中できることを見つけることが出来るか、どうやれば楽しめることが出来るのか、その道を見出せないでいる方も多いです。そこで私たち支援者が彼らの気持ちに寄り添い、彼らが笑顔で楽しめる場を創り出していくことが大切です。そして、彼らが心から楽しむためには、私たち自身も仕事だからやるではなく、心から楽しまなければ伝わっていきません。自分たちがやりたいことを提案して実践し、スタッフのみなさんと一緒に行うことで楽しみを共有していくこと。それが仕事だけでなく、文化・芸術などの面での社会参加に繋がっていくことが出来るのではないかと思うのです。